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2009年 10月 02日
連休を避けて、信州小布施の町を訪れた。というより、三百万本のコスモスが花盛りだと言う黒姫高原のコスモス園に出かけて、見かけた近郊ガイドで面白そう、と立ち寄った、というのが正しい。コスモス園の方は、知恵者がいたらしく、スキー場のゲレンデの下の方をコスモス園に仕立て、夏場も客が来る、リフトは動かすといういわば閑散期対策だ。見事に成功したと言っていいのではないか。手をこまねいて雪が少ない、と嘆いているだけが能ではない、という典型みたいな話だろう。
かねて栗の産地だとは聞いていたし、いつかどなたかに頂いた栗鹿の子が絶品だったのも記憶している。しかし、尋ねた小布施は何よりも町のたたずまいが素敵で、すっかり魅了された。それだけではない。土地の名家に永く滞在したことがあるという葛飾北斎の記念館があり、これまでの北斎に関するいい加減な知識(とも言えない程度のものだが)が完全に一変した。北斎と言えば奇抜な構図で描くさまざまな富士山。それに卒塔婆小町で有名な小町一代記程度だった。ジャポニズムとして欧州画壇に大きな影響を与えたくらいのことは高校の歴史で教わったが、まあ、平均的日本人としてはそんなところだろう。ところが、当地を訪れて漠とした印象がくっきり形をなしたから旅というのはしてみるものだと思う。 あの頃の日本画というのは二次元的で遠近法には縁がない、その上類型的パタ^ンの繰り返しが多く、デッサン力などは元々要求されていない、といった浅薄な先入観がないではなかった。もちろん、それは審美的、芸術的価値とはさして関わりがないものの、なまじ西洋的技法を取り入れたといわれる司馬江漢の絵にそれほどの魅力を感じる人もいないだろう。ところが、今回北斎館で見た彼のデッサン力の凄さには、さして美術に目のある訳ではない筆者でさえ、舌を巻くものがあった。往年パリの万博に展示されて印象派画家に決定的影響を与えた、というのも理解できる。構図の素晴らしさ、さらには類型的な図柄にも加えられている天才の息吹についても素人が云々する必要もなかろう。 だからソフト力だ、などとにわかに牽会付強の説をなす訳ではない。しかし工業力だけが国の全てではない、という実感はある。昨今のアニメが、あるいはCGが北斎に代わるものだということのなるのかどうかはともかく、である。一度小布施に出かけただけでこれだけの知的感動があった。やはり物見遊山というのは文化的体験なのだろう。なまじマスプロ化しなければ、の話ではあるが。
by akirairiyama
| 2009-10-02 11:30
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