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2008年 05月 28日
平成20年夏場所結びの一番の横綱対決は様々な物議を醸し、文科相が談話を発表するに及んだ。文科省を主務官庁とし、その指導監督下にある公益法人「日本相撲協会」の行事における出来事だけに、ひとことあっても良い、という理屈なのだろうが、オカミの出る幕かい、という感想を抱かないでもない。(ちなみに、今回の公益法人制度改革によれば、公益法人としての認定を受けるためには、収益事業比率が半分以下であることを法律は要求している。日本相撲協会は常識的に考えれば、公益認定を受けられないということになりそうだ。「国技」大相撲は単なる収益事業団体だ、ということになる。)が、そんなことより、この事件の持ついくつかの象徴的な意味合いの方が、より考えてみるタネを与えてくれたように思う。
現在のところ、外国人力士は各部屋一人ということになっている。それもあって、力士総数の中では外国人比率は一割程度だが、幕内以上についてみれば四分の一に達していることは周知のとおりだ。外国人枠というのは、プロ野球にもサッカーにも存在している。これがなぜ必要なのか、どういう経緯で今の人数に落ち着いているのか、はあまり明らかではない。プロ野球はそんな枠を取っ払って、外国人だけのチームもあり、ということにして、それでもファンがついてくるかどうかに委せれば良い、という気がしないでもないが、その辺りが第一の論点だ。アメリカの財務省高官が最近、日本の資本市場国際化にはまだ望むべきところが多い、と発言したが、スポーツ界はどうだろう。その際に、「国技」は別格扱いにするのだろうか。人種意識をことさらに持ち込むつもりはないが、黒人の力士が出現する日は来るのだろうか。不得要領の協会理事長さんのコメントからは、そんな将来のことについての意見は期待すべくもないが、例えば横綱審議会やら、相撲評論家の皆さんはどう考えるのか、ぜひ聞いてみたいような気がする。われわれ自身がどんな意見を持つかもそろそろ決めてておいた方が良いかもしれない。 相撲は神事であった。そしておそらく今日においてもそうなのだと思う。このあたりについては「言わぬが花」という側面があるのは認めても良い。相撲協会が受け取っている国庫補助が憲法八十九条に違反するかどうか、というのは学者には格好の話題を提供するだろうが、税金の無駄遣いかどうかのほうが多分より大きな論点だろう。それよりも、相撲にはプロレスやプロ・ボクシングと違って、固有の品格や「抑制」の美学が存在するのか。あるいは相撲にはどのような約束事があるのか、存在するとすればそれがどのような形で力士に教育されているのか、が次の論点だ。朝青龍のサッカー事件にしても、今回の土俵上のパフォーマンスにしても、本当のところ何が顰蹙を買っているのか、モンゴル出身の(あるいは欧州出身の)力士に心底理解されているとは思われない。横綱たるものが立ち合いに張り差しを常用すべきではない、三役はやたら立ち合いに変わるな、というのもこの流れに属する。 国際化が時代の趨勢である、というのは事実だ。しかし、唐突なようだが皇位継承権を持った方が外国人を配偶者に選ぶことを認めるのか。より一般化して言えば、国際化に「たが」をはめることがあり得るのか、それはなぜか。そろそろこういうあまり白日の下で論議したくないことにも回答を用意せねばならない時代になってきたようだ。
by akirairiyama
| 2008-05-28 01:30
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