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2008年 07月 09日
2004年1月に創刊されたAsia Views( http://new.asiaviews.org)は、アジアの識者の声を英語で世界に向けて発信する始めての試みとして極めてユニークな存在だ。インドネシアのTEMPOを始めとするアジアの主要なメディア5社の連携で、それに朝日新聞他の5社が協賛参加して週刊されるオンライン誌は、毎月ハードコピーでも入手できる。この試みが所謂クオリティ・ペーパーとして定着することを期待したい。
ハードコピーの最近号(2008年6/7月)はASEANの新規加盟国4カ国(所謂CLMV・カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)に焦点を当てた特集を組んでいる。冷戦まっさかりの1967年に設立された時は「反共」連合の色彩の濃かったASEANだが、1984年に英国から独立をとげたブルネイが参加して6カ国体制になってから徐々にその独自色を強めてゆく。内政不干渉の基本的スタンスのもと、欧米からの明示・黙示の圧力を巧みな「アジア的」外交でかわしつつ、1995年から99年にかけて上記4カ国を加えた10カ国体制に落ち着いているのは周知のとおりだ。 就中欧米からの圧力が強かったのがミャンマーの加盟を巡ってであったのは記憶に新しい。それでもASEANはミャンマーを受け入れた。その後の同国軍政指導者たちの信じられない愚かな振る舞いに対しても、根気よく穏やかな対応を続けてきた。サイクロン被害救済に当たっても、頑な態度を取る同政権が唯一窓を開いたのがASEANに対してであったのはおそらくその結果だったと言ってよい。だが、余りといえば余りのミャンマー軍政の立ち居振る舞いに、苛立ちの念が発生するのもまた当然で、これまでの内政不干渉原則から一歩を踏み出して、なんらかの制裁措置も視野に入れるべきだとの声もASEAN内部から挙がるに至った。 ASEANが経済的統一体であるに留まらず、政治的統一体に踏み込むべきだ、という議論がこれで、それに対して従来の内政不干渉原則は堅持すべきだ、との声もなお強い。そのあたりを「玉虫色」に取りまとめたともいうべきなのが今回のASEAN憲章案なのだが、はやばやと批准を終えた国がある一方、Asia Views今月号の シンガポールTODAY紙のタン氏のように拙速な批准に慎重な声もある。経済重視、内政不干渉のASEAN路線はそれ故になし得なかったこともある反面、それでなくてはなし得なかったことも多い。欧米流の人権外交、あるいは介入外交(R2P)と一線を画してきたASEANがどの途を選ぶか。示唆に富んだAsia Viewsの今月号である。一読をお勧めしたい。
by akirairiyama
| 2008-07-09 14:43
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