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2008年 12月 20日
日経新聞がCSIS(戦略国際問題研究所)と毎年開いているシンポジウムが、今回は「米新政権と日米同盟の課題」をテーマに18日開催された。米国からはジョン・ハムレ、ジョセフ・ナイ、ジム・ケリー、カート・キャンベル、マイケル・グリーンという顔ぶれ。日本からはモデレーターとして谷地前外務事務次官、西原平和研理事長が参加。
新オバマ政権のアジア政策、あるいは対日政策については、その重要性と政策継続性の必要を認識する点において、共和党のそれと大きく異なるものではない、と米国側の意見は一致していた(ちなみに出席者のうち3名が民主党、2名が共和党)。ただし、新政権は当面はブッシュ政権の残した大火事の消火作業に忙しく、新政策を打ち出すのは当分先にならざると得ないだろう、という。 これに対して日本側モデレーターは、日・中・米の三国関係において、米国は中国の重要性をより強く認識し、相対的に日本に対する関心度が希薄になるのではないか、という一般的な懸念について米国側の認識を問うた。米国側参加者は全員若干のトーンの違いこそあるものの、日米基軸は不変かつ基本であり、その認識の上で対中政策を構築することになる、という点で見解は共通だった。特に中国については、たとえ米高官の訪中頻度が増加したにしても、それは単に相対的により多くの問題の所在を意味するに過ぎず、日本がそれ以上の含意を憶測する必要はない(ナイ)、また中国のパワーを認識した上で、封じ込め(containment)ではなく、責任ある利害関係者(responsible stakeholder)という接し方を続けることに変わりはない(ケリー)、対立要素の強調よりは、環境など世界的公共財について共に考えてゆくといったアプローチの方が三国関係にとってより生産性の高い作業になるだろう、という意見が支配的であった。中でケリーが、中国にアフガンやタリバンの問題、さらにはインド・パキスタン関係についてより関心を持たせ、関わらせるという方向が望ましい、と発言したのは、その真意が何処にあるのかは不明ながら注目された。おそらくはむき出しの形での国益追求だけではなく、グローバル・パワーとしての責任を自覚させたい、というほどの意味ではあろうが、相変わらずのナイーブな米国流だ、と看過するには少し気になる発言ではあった。 日米関係、さらには日本のあり方については、よりほぐれた雰囲気の中で面白い発言が相次いだ。日米関係は結婚して永い老夫婦のようなもので、さてレストランで夕食の最中にも、終わってからも、さして話題もないし、話さないかといって仲が悪い訳でもなし(ハムレ)、いやいや、それぞれ自立した夫婦で、それぞれが周りを駆け巡る子供達(それぞれの問題)を取り仕切るのに一生懸命で、ゆっくり話している時間がないという方が近い(キャンベル)。そのどちらであれ、中国と浮気をするというのは考えにくいね(グリーン)。明らかに成熟した関係になっている。今回のG3の問題が起きたからといって、日本バッシングの声は聞いたことがない(ハムレ)。それにしても日本という国から Yes, we can.という声を聞いたことがないね。We can’t. We won’t.が多い。(グリーン)日本も関心の中心に位置していたければ、そんなにいろいろ期待しないでよ(Don’t ask me too much.)ばかり言っていたんでは駄目だね(キャンベル)。 また、指導者の資質について、背景に応じた事態の読み解き方(contextual intelligence)が肝要である、とか、二国間関係として論じるのか、多国間関係として論じるのかについては、これまた論点に応じた視点(variable geometry)が大事だとか、要するに英語を母国語としている強みで、次から次にこうしたsexyなキャッチフレーズがぽんぽん出てくる。かなわねえなあ、という感じだ。
by akirairiyama
| 2008-12-20 20:27
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