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2009年 06月 16日
イラン政情の帰趨がはっきりしない。アフマディネジャド大統領の原理主義的言動に対して、批判的なムサビ氏が対立候補に立ち、西欧メディアは希望的観測を含めてムサビ氏の勝利を期待した。80%を超える高投票率も、現状に対する不満分子の噴出を意味するものと解釈され、(西欧の)期待はいっそう高まった。ところがふたを開けてみれば、アフマディネジャドの圧勝(得票率が60%を超える)である。ムサビ支持派は、開票に組織的不正があったと主張、街頭デモに数十万人が繰り出した、それに対して治安当局が介入・弾圧というのは日本の報道でもおなじみだろう。
もともと、両氏のテレビ討論からして激突の可能性は予測されていた。筆者はイランの礼儀風俗には無知だが、両者が番組の中でお互いを呼び捨てにした、というのは、識者に言わせると公開の席では考えられないという。詳細の報道は、ペルシャ語を解さない筆者としては、英米系の外国メディアに頼る他ないが、先に述べたややムサビびいきの論調を割り引いても、お互いの攻撃はロー・ブローを含めて相当なものだったようだ。何よりムサビの先駆者。いわばイスラム近代化の旗手と目されたラフサンジャニ師が、(事実かどうかはともかくとして)汚職によって失脚したという事件を、ムサビ氏に対するネガティブ・キャンペーンの核に据えた事は事実のようだし、ムサビ氏の方も、ラフサンジャニ大統領の激越な(常軌を逸した)発言がいかにイランの国益を損ねたかについて、相当な追求キャンペーンをはったようだ。 アフマディネジャド大統領は、どこかの首相も真っ青になるくらいのばらまきを地方中心に行い、それなりの支持層を固めた他、西欧先進国の反応をネガティブ・キャンペーンの軸に据えたムサビ広報には根強い反感もあったようで、一面的な評価はまだ困難である。ただ、オイル・リッチな国がどれほど原理主義的であろうが、過激な大統領がいようが、それはそれだが、核開発にご執心だということになると話は別だし、何よりも対イスラエル政策がそれに絡んでくるとオバマさんも強い関心を持たざるを得ない。アフマディネジャド大統領の一見奇矯に聞こえる言動(ホロコースト否定など)も、どこやらの将軍様に比べれば、上にイスラム権威を代表する合議体が存在する(それが良いか悪いかは別にして)という違いがあるし、第一20代以下の若者が人口の過半を占める、という極めて流動的な国家の指導者だ。就任以来逆風続きのオバマ政権だが、その「対話」路線にとっては今回の選挙結果は、帰趨はともかくとして決して順風とは言えまい。それにどう対処するか。オバマ大統領の真骨頂が問われることになりそうだ。 非武装ならパレスチナ国家を認めても良い、としたたかにいってのけるイスラエルもタフ・ネゴシエーターだ。中東情勢と核拡散が、このうえなく喫緊の政権にとっての踏み絵にならざるを得ない事態にオバマ大統領は直面することになる。どうさばくか。どれほどの冴えを見せるか。世界は固唾をのむ。それに比べて、社長の首がどうだ、マンガ文化がどうだ、はてはノー・コメントだといったり言わなかったりするのが最大の政治ダネだという国の格調の低さ。それでも豊かならばまだ我慢もしようが、政・官・財による超放漫経営のツケだけでいづれ半殺しにされる国民たるもの、やるせない、だけでは済まないよね。
by akirairiyama
| 2009-06-16 03:53
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