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2009年 09月 11日
このところオペラ三昧を楽しむ至福の時間を過ごしている。佐々木忠治さん(8.17「上野(2)」)の招聘するミラノ・スカラ座の公演だ。1981年から始まったスカラ座「引っ越し公演」も今回のアイーダで百回を数えたという。居ながらにしてこれほどの素晴らしい公演を聴くことができるのも、21世紀に生きている余録だろうか。今回はアイーダとドン・カルロの二演目だった。
アイーダはゼッフェレルリの装置で、絢爛豪華という言葉がぴったりの舞台だ。まさに息をのむ態の圧巻のスペクタクル。出演者の方も、一幕でこそ最後に声がひっくり返って、どうなることかと思わせたヨハン・ポータのラダメスも幕が進むごとに落ち着いて堂々の歌唱。アイーダも、代役のアムネリスも、ドラマチックに演じきり、さすがスカラ座は粒揃いだ、と感服させるものがあった。指揮者のバレンボイムは例によって解り易い演奏で楽しませてくれたが、カーテンコールを含めて、ブーイングがあったのはなぜだろう。近頃、特に指揮者に対するブーイングが耳につくのだが、どなたか理由について思い当たる節がおありだったら、ご教示いただきたいと思う。 ドン・カルロの方はアイーダとは対照的にシンプルな、無機的といってよいくらいの舞台だったが、ドラマチックな盛り上がりではアイーダをしのぐものがあった。とにかく休憩時間を入れると、今回の短縮版でさえ上演時間5時間になんなんとするオペラ。バス二人の掛け合いだけで一場を構成するなんて言うのはヴェルディならではの趣向だし、一級品のバスを二人そろえるのはそうどこの劇場でもできる相談ではない。その上テノール・ソプラノは言うに及ばず、バリトンからメゾ(しかもコロラトゥラ)まで、しっかりした役所を演じるような脚本だから、上演回数が少なくなるのもやむを得ないだろう。今回はラモン・ヴァルガスと名花バルバラ・フリットーリで会場は沸いた上、ルネ・パーペとアナトーリ・コチェルガのバス二人が出色。その上にエボリを歌ったスミルノヴァが(容姿はともかくとして、というのはアリアの中でおのれの美貌を呪う、という部分があるからだ)素晴らしかった。 まさにオペラを堪能したといってよいのだが、気がかりなのは佐々木さんの健康状態が今ひとつ勝れないようにお見受けしたことだ。とかく妙な了見の人が見え隠れする日本のオペラ界、そしてバレエ界にとってなくてはならない人なだけに、一日も早く回復されることを祈りたい。
by akirairiyama
| 2009-09-11 15:00
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