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2010年 09月 17日
炎暑が漸く去った。待ちかねたようにN響の秋シーズンが始まる。ネビル・マリナーなのだが、2007年に来日した時には聴きそびれているから初対面。ベルリオーズにシベリウスにベートーベンというプログラムの構成を見て、一体どういう神経の指揮者なのだろうと驚いた。それでも他のプログラムを見ると、シューマン生誕200年のオールシューマンとか、まともな選択もあるようだから、これはなんでもこなします、という、バーンスタインの再来の様な人なのだろう、と見立てたら案の定、明快この上なく3曲をこなしあげた。シベリウスはバイオリン協奏曲だったのだが、ミハイル・シモニアンというロシアの若手バイオリニストがなかなか素敵で、将来を期待させるものがあった。ベルリオーズがにぎやかなのは例の通りだが、ベートーベンは7番。楽しく聴かせてくれたのは言うまでもない。
引き続いて英国ロイヤルオペラ、と涼しくなったとたんに目白押しだ。トラビアータがゲオルギューの筈で大いに楽しみにしていたのが、お嬢さんの手術立ち会いとかで不参加。代役がアルバニア出身のエルモネラ・ヤオという歌い手だと聞いて、いささか失望しての公演だった。それがどうして。美声とか、圧倒されるような透明感といった声ではないが、情感豊かな歌いぶりで、何よりも演技力が素晴らしい。先のトリノの時のローラン・ペリと違って、演出は正攻法の古典そのもの。だから一層演技力が正面切って表に出るという趣がある。だから、断然ハンカチを目にあてる頻度は多くなる。 テノールはアメリカ人のジェームス・バレンティ。これはいまいち、というか今二か三くらいの声だが、癖がなくて結構透明感があり、ヤオとの二重唱にはぴったりだったのは救いだった。バリトンはサイモン・キーンリサイドというイギリス人だったが、得な役所を十二分に心得た歌いっぷりで、なかなか聴かせた。トリノの時の演出がいささか消化不良だったのに較べて、今回のリチャード・エアの演出は、おおよそ観客がイメージとして刷り込まれているトラビアタ像を忠実に再現しているところがあり、筆者の様な保守的な観客には、何よりも違和感なく安心できたといってよい。来週はおめあてのネトレプコのマノンなのだが、ペリの演出だというから、さてどうなるか。 ところで公演はNHKホールだったのだが、N響の時には終わった後に渋谷駅行きのバスが何台が待機している。ところがオペラ公演の時には全くそのサービスがない。商売っ気がまるでないのは規制産業に特有のものかもしれないが、国土交通省もおやりになることはまだまだありそうだ。
by akirairiyama
| 2010-09-17 00:22
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