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2010年 11月 04日
東京バレエ団の創立30周年記念ガラに行ってきた。モーリス・ベジャールバレエ団との共演で、ズービン・メータとイスラエルフィルをコックピットに入れるという豪華版。演目は東京バレエ団がペトルーシュカ。ベジャールが「愛が私に語りかけるもの」と題したマーラーの交響曲第3番の4・5・6楽章。そして最後に両バレエ団共演の「春の祭典」が勢揃いである。振り付けは全てベジャール。甲乙付け難いラインアップだったが、やはりマーラーの3番が圧巻だったように思われた。共演の藤村美穂子のメゾ・ソプラノが例によって巣端しかったのもさることながら、十人を超える群舞が、あるときはマスとして、あるときは一人一人違った動きで踊る。至難な動きとみえるものを何の苦もなく踊ってみせる踊り手たちも感動的だが、そうした動きを設計し、それを舞台上に現出させるコレオグラファーの仕事というのはただ事ではないように感じられた。
最近流行の「才能もないくせに自己主張だけは強いオペラの演出家」(永竹由幸氏の名言)とコレオグラファーとの違いは、とにかくコレオグラファーは踊り手との相乗作用で美を創出する。おそらく素晴らしい踊り手が素晴らしい振り付け師に出逢った時に、バレエ芸術というのは最高の境地に到達するのではなかろうか。オペラの演出家というのは、当たり前の話だが、歌手の能力を引き出したりはしない。総合芸術としてのオペラの観客により深い感動を与えるお手伝い役の筈なのだが、時として演出家の自己満足としか思われない目障りな工夫がなされるのはご承知の通りだ。最近の売れっ子の演出家、特にドイツ系の若い演出家の目に余る暴挙を腹に据えかねているからついこんなことを書いてしまうのだが、芸術の世界でも悪貨が良貨を駆逐するという現象が頻繁に見られるようになるのでは頭が痛い。 春の祭典は、ストラビンスキーが自作を指揮したコロンビアのSPであの「奇怪な」(と当時は思われた。なんせ半世紀前の話である。)音楽の虜になってから久しい。あれがバレエ音楽だと聞いた時にはもう一度驚いた。というのも、当時はバレエとは白鳥の湖みたいに白いチュチュをきて踊る、あんなのだけがバレエだと思っていたからなのだが。いろいろな振り付けを見たが、ベジャールのもなかなか良かった。特に、フィナーレに近い部分で、およそ人間の肉体能力を遥かに超えると思われる苛酷な動きを連続して要求され、それを見事にこなしたカテリーナ・シャルキアには脱帽である。
by akirairiyama
| 2010-11-04 11:28
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