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2011年 12月 20日
相前後して、二人の指導者の訃報が伝えられた。一人は善と希望を象徴し、今一人は悪と破壊の代名詞とも言われる。チェコのバツラーフ・ハベル大統領と北朝鮮の金正日総書記だ。
1989年の「ビロード革命」はいまや歴史上の出来事になってしまった。しかし、圧倒的な支配力を誇っていた旧ソビエトに、敢然と非暴力路線で立ち向かった「市民フォーラム」と劇作家のその指導者は、何よりもその道徳的な高潔さと、志の高さにおいて、人類の良心の生き証人とも言うべき存在であった。中央ヨーロッパで、たまたま同時代に「民主化」プロジェクトのいくつかに関わるという縁もあって、氏の馨喙に接する機会があった筆者にとっては、ことの他忘れ難い存在である。猛烈なヘビースモーカーであると同時に、決して円満な人格の持ち主という訳ではなく、あちこちで氏の性格と発言は摩擦音をもたらした。しかし、彼は決してそれを糊塗することなく、天衣無縫とも言うべき態度に終始。国民もまたそんな彼を愛した。民主化運動のもう一方の立役者であった「連帯」のワレサ氏が典型的な「労働者」であったのに比して、ハベル氏は善かれ悪しかれ骨の髄まで「インテリ」だった。 かたやご存知金正日氏。世襲制の社会主義国家、先軍政治、瀬戸際外交に独裁政治個人崇拝と、およそ民主主義でないものならばなんでもあり、というエニグマ像が世界の舞台に現われて久しい。彼の言動について、その真意を推し量ったり、予測することはほとんど不可能に近い。さてこそ、こうもあろうか、こうではないか、と評論推測する人びとのメシのタネになっている訳で、ことほど左様に合理的推論の枠を超えた存在だ。行動や発言の意図が理解出来ないし、仮に理解出来たとして、なぜその意図を実現するためにそのような行動パターンになるのか、因果関係が全く理解を超える。とはいえ、全くの狂人で理性的判断とは無縁だ、ということになっては流石に困るから、最低限の合理性を備えた選択をしているのだろう、という仮定の下に手探りをしている、というに近いのではないか。もっともこれは金正日氏の専売特許ではなく、イランのアフマディネジャド大統領の言動についても多かれ少なかれあてはまることではある。 善と希望の象徴よりは、悪と破壊の代名詞の方が衆目を集め易いのは残念ながら事実だ。ひとつには善と希望の方は反応が予測しうるのに、もう一方はそれが出来ない、言語体系が異なる、ということにもよるのだろう。未知なるものに惹かれるのは人間の本性だが、将軍様や大将様はごめん被りたい。
by akirairiyama
| 2011-12-20 14:21
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