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2012年 01月 16日
ミャンマー軍事政権の「雪解け」傾向が、当初多くの人が懐疑的であったのに背いて、着実に望ましい方向に向かっているのは喜ばしい。特に今回の政治犯大量釈放は長く望まれていただけに、ひときわ政権側の真摯さを示す良きバロメーターになったと思う。釈放者の中にかつての開明派将軍として期待の星であったキン・ニュン氏の名前が含まれているのは、真意がどこにあるのか、最近のミャンマー情勢をフォローしていないので不明だが、良いニュースには違いない。
頑迷固陋ともいうべきタン・シュエ将軍の率いる軍事政権(SPDC)の下にあって、キン・ニュン首相の舵取りだけが唯一絶望的な孤立政策をとるミャンマーに明るい将来を期待させるよすがだったことに異論は少ないだろう。その彼が2004年に突然逮捕監禁され、彼の一派もことごとく投獄されたと聞いた時、これで希望はなくなった、と感じたのは筆者だけではなかったと思う。政権側が硬直的であれば、民主勢力(NLD)の象徴スー・チーさんも原理原則(諸悪の根源は軍事政権)に立ち返らざるを得ない。わづか一度の面会の印象だけで断定的なことを言うのは差し控えたいが、当時筆者の眼に映ったスー・チーさんは、圧政に敢然と立ち向かう英雄ジャンヌ・ダルクというより、民主化への期待と軍政の重圧に健気に耐える聡明な女性、という印象に近かった。 彼女は民主化勢力の国際的スポークス・パーソンとして全ての質問に答えざるを得ない立場にあった。拡大する中国の影響力、低下する自国通貨購買力、経済制裁の評価、少数民族問題、民主化の将来、等々。いかに彼女が聡明であっても、それら全てに懇篤な回答をすること等できる相談ではない。ブレーンに恵まれた日本の首相の言動でさえどうであるか、を想起して頂くだけで明らかだろう。先にも述べたように原理原則に立ち返る以外回答の統一性(integrity)は保てない。軍事政権は悪だ、軍事政権ある限りビルマに安定はない。軍事政権延命に有用と思われる外国の援助(ODAを含む)はやめるべきだ、etcというのはこのコンテキストで理解すると意味するところが明らかだ。 ティン・セイン政権に代わってから、明らかに軍事政権側のスタンスに変化が見られるようになった。政権側の cosmetic work に過ぎないとか、経済援助欲しさのジェスチュアだ、とか皮肉な見方をする人々の意見にも関わらず、ミャンマーの現状が大きく変化しつつあることは衆目の一致するところだろう。中国とのエネルギー協力破棄にしても、もともと大の中国嫌いの国民性が経済制裁解除の期待と共に本家帰りしただけのことだし、スー・チーさんの「軟化」だって彼女の切望していたタイミングが到頭訪れたに過ぎないと見ることも可能だろう。1990年のビルマ総選挙以来20余年が経過した。歴史のサイクルというのはやはりそれほどの時間を要するものかもしれない。民主党政権が誕生して2年余り。後18年は待てない様な気もするが。
by akirairiyama
| 2012-01-16 17:02
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