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2009年 03月 31日
日本に関する多くの著作で知られるJ.A.A.ストックウィン・オックスフォード大学教授の’Governing Japan-Divided Politics in a Resurgent Economy’の改訂四版の出版に際して、外国特派員クラブで開かれた講演会に出席した。同書は(全てを読んだ訳ではないが)改版の度ごとに加筆があり、副題も出版社も変わるという面白い企画だと聞いた。(ちなみに、そのうちの一つが1983年に木鐸社から「現代日本の政治変動−繁栄の中の対立と統合」として邦訳が出版されている。)まことに洒脱なお人柄で、楽しい講演会だったが、そのさわりの部分、「現代日本の直面する六つの危機(crisis)」をご紹介してみたい。
ストックウィンによれば、日本の第一の危機とは、政治権力と民主的答責性(accountability)の乖離であるという。永きにわたった自民党政権と官僚制の融合現象に端的に見られるように、実効性のある説明責任乃至は答責性が、政治権力の存続に対して歯止めの機能を喪っている。選挙による民主的チェックアンドバランスが名目的なものに堕してしまっている、ということだ。 第二には、それはとりもなおさず極めて低い投票率に示される国民の参加、あるいは参加意識の欠如に顕われるという。政治に対する受益者満足度というものが不当に低いままそれを是正する動きが見られないことを意味する。 第三には、憲法問題に正面から取り組もうとする姿勢の不在。九条問題が典型的だが、それに留まらず、基本的人権、例えば言論・表現の自由についてもその場凌ぎのような態度に終始している、という。 第四は経済的リベラリズムと政治的非・リベラリズム(illiberal)の乖離乃至は相克が見られる、という。例えば政府のメディアに対する対応、教育基本法の取扱い、さらには第三に指摘した言論の自由についての考え方にもそれは現れている、と見る。 第五は急速な高齢化とそれに伴う人口減少。これは3500年に日本人は一人になる、というブラックジョークのような問題としてだけではなく、年金問題の将来、あるいは移民に対する考え方といった基本問題に対する先送りの態度のつけが早晩回ってくる、という意味でもある。 そして最後に、国際社会における日本の地位だという。特に中国に対してどのように対峙するか、というのは単に日本人が自らどのように考えるか、というレベルを超えて、国際社会が日本の存在を無視(Japan passing)してもよい、という事態を超えて、中国勢力範囲の一部としての日本、という事態を招きかねないという。 ストックウィンは、これらの危機が自民党長期政権と深く関わっていることを認めつつも、反面、それが長期的視野を可能にしたり、健全な社会を構築する上で力あったことも事実だとする。一党支配が不可避的に伴う腐敗の問題とか、官僚制の機能再検討がおろそかになる、といった副産物を余儀なくさせた、にしても。 さて、近い将来に政権交代は発生するのか、という問いには、学者らしく慎重に「どちらとも言えない」というに留まった。いわゆる「日本論」にありがちな「特殊」論でもなければ、万歳でもない、平易な表現で日本を観察している態度には好感が持てた。特にこの六つの問題点をめぐっては、いわゆるマニフェストの中に各党がそれぞれの立場を明確にすれば、これは第二の問題点に自ずから答えることにもなろうと思われた。この学究が第五版を出すとき、新たにどのような章が加筆されるのだろう。その事態は今年後半には発生していることになる。
by akirairiyama
| 2009-03-31 17:15
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